レポート・市場動向
新型コロナで市況が激変
(一社)宮城県不動産鑑定士協会不動産市況DI調査
一般社団法人宮城県不動産鑑定士協会は2020年6月、「第19回宮城県内の不動産市況DI調査」(暫定版)をまとめた。東日本大震災以降、堅調に推移してきた県内の不動産マーケットは、新型コロナウイルス感染症の影響により、住宅地・商業地の取引価格DIが大きく減少した結果となった。
災害列島
2019年台風19号の爪痕深く
2019年10月12日夜から13日未明にかけて東日本を縦断した台風19号は、宮城県にも甚大な被害をもたらした。県によると、記録的な豪雨の影響で河川の氾濫や堤防の決壊が相次ぎ、死者、行方不明者合わせて21人、家屋の全壊は302棟を数えた(20年3月27日現在)。被害が深刻な地域では復旧作業が進むが、住民の避難が長期化、現地再建か集団移転かの判断を迫られている。
◆青葉区
急がれる仙台駅西口の防災整備
仙台市の中心部を擁し、東西に長い青葉区では、2019年の台風19号で崖崩れによる被害が多く、まだ修復工事が続く。不動産市況では中心部のマンション建設が盛んとなっているほか、錦ケ丘・愛子地区も勢いを増す。新型コロナによる影響はまだ局所的だが、これからのインパクトに備える必要がありそうだ。
◆宮城野区
内水氾濫へ官民で取り組み
「仙台駅東口」と「仙台港背後地」の両輪にけん引され、飛躍を続けてきた宮城野区の不動産。2019年は台風19号に見舞われ、宮城野区では扇町、日の出町、白鳥など内水氾濫の常習地で被害があったが、オープン間もないコミュニティ広場では、行政と地域が連携した取り組みで地域を守る実績をつくった。
◆若林区
浸水被害の弱点対応が課題
若林区では、仙台市地下鉄東西線の開業で土地区画整理事業や周辺開発が急速に進んだ。近年、地下鉄沿線の一部に地価の著しい上昇も見られたが、落ち着きを見せている。仙台工業団地の移転も決まり、跡地には商業施設の建設が予定されている。ただし、区全体は低地にあり、浸水被害に弱い面があらわに。
◆太白区
崖条例付加で価格に影響も
仙台市南部に位置する太白区。あすと長町は分譲マンション販売が目白押し。富沢西は商業店舗が進出、生活利便性が向上している。災害については広瀬名取川水系もほど近く、支流も含め台風19号で浸水するエリアがあった。一方、丘陵地では崖条例により土地の価格に影響する例もある。
◆泉区
利便性の高さで価格上昇中の泉中央
19年10月に宮城県に襲来した台風19号。泉区でも住宅ののり面崩壊や七北田川の護岸が削られるなどの被害が発生した。幸いにも住宅などへの大きな被害はなく、土地価値への影響はほとんどない。仙台中心部の土地価格の上昇とともに、利便性の良い泉中央の価格上昇も続いている。
国際規格
「防災ISO」創設で仙台から新産業
2015年3月、仙台市で第3回国連防災世界会議が開催され、東日本大震災の教訓を基に、186カ国が賛同して「仙台防災枠組」が採択された。今回、各国独自の防災対策に対し、防災の概念を統一し、備品の安全性などに基準を設け、世界標準化しようと国際規格の「防災ISO」を創設し、防災産業の発展を目指す。
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